アルプスから高尾山

国際結婚しスイスに5年住んで帰国した主婦が日本とスイスのギャップに弄ばれる

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多言語国家スイス そしてスイス人とフランス人の不思議な関係

私のスイス人の旦那はよくフランス人の友達と遊んでいる。
先日もそんなフランス人友達の中の1人の家に招待され、家族みんなで遊びに行った。
欧米人が大好きな『ホームパーティー』というやつである。

旦那はスイスのフランス語圏の出身で、同じ言語を話すフランス人とは一緒にいやすいようだ。
フランス人の友達はたくさんいるのにフランス語以外を母国語とするスイス人の友達はそんなに多くない。


スイスには国語が4つある

よく「スイスって何語?スイス語?」という質問を受けることがあるが、『スイス語』と呼べるものは『スイスドイツ語』である。
国内で話している人口が多い順から

  • ドイツ語(スイスのドイツ語)
  • フランス語
  • イタリア語
  • ロマンシュ語

となる。

ちなみにスイスのドイツ語はドイツ人が聞いても理解できないとか。
学校で習うのはドイツで使われているドイツ語なので、日本でいうところの標準語と方言といったところだろうか。
しかも同じスイスドイツ語でも地方によってかなり訛りが強いらしい。
私は東北出身だが、地元の言葉を地元出身者以外の人に話してもほとんど理解されないので、私の中ではスイスドイツ語もそれに近いのだろうと理解している。

また、スイスのフランス語も訛りがあるが、そのままフランス人に話しても問題なく理解される程度。
フランス語はフランス国内でも地方によって訛りがきつい。


バイリンガルやトリリンガルがゴロゴロいる

多言語国家であるスイスには多言語を話す人がたくさんいる。
学校では自分の母国語以外の国語と英語が必修科目になっている。
これだけでまじめにやれば3ヶ国語話せる人になる。
もちろん日本人で英語を話さない人がたくさんいるのと同じように「ドイツ語は8年も勉強したのに全然話せないよ」というスイス人もたまにいるが、日本に比べたら触れる機会が多いし、県内で2ヶ国語話していたりする地方もあるので覚えやすいように思う。
例えばスイスで売られている食品のパッケージの裏を見ると、成分表示はいつもドイツ語、フランス語、イタリア語の3ヶ国語で表記されている。(やたら文字多い。)

また、ヨーロッパからの移民も多く、両親の国籍が違うハーフもとても多いので、それだけでまた言葉が増える。
日本で3ヶ国語以上を流暢に話せる人はそう多くはないが、スイスでは全く珍しいことではない。
そして発音の違いなどに苦しめられることなく自然に数ヶ国語を習得できてうらやましいなと私はいつも嫉妬している。


スイス人同士なのに外国語で話すことも

これは私がヘンに感じることなのだが、スイス人同士でも違う言語圏の人でお互いの母国語が苦手だったりすると(あまり多くないパターンに思えるが)英語で話したりする。
日本には国語が日本語しかないので、日本人同士が外国語で話すことを強いられることはあまりないだろう。
東北のおばあちゃんと沖縄のおばあちゃんが標準語が話せずに言葉が通じないということはあるかもしれないが、そこで第3言語の外国語を用いるというのは可能性はなくはないかもしれないが想像しがたい。
スイスではそんなことがたまに起きたりする。


同じ言語で話していてもフランス人はもちろん外国人

スイス人にとって外国人であるフランス人と同じ言語を話している私のスイス人旦那。
私は「ドイツ語を話すスイス人よりフランス語を話すフランス人の方が親しみを感じちゃうんじゃないの?」と聞くが、彼はそんなことはなくフランス人は同じ言葉を話していようが外国人に感じるし、ドイツ語圏のスイス人は言葉が違えどスイス人同士と感じると言う。(それが紛れもない事実であるし。)

しかしスイスのドイツ語圏では食べ物をはじめドイツ文化の影響を強く感じるし、スイス国内でも言語圏による文化の違いが大きいように感じるので、なんとなくフランス人の方がドイツ語圏のスイス人より私の旦那との距離が近いように見えてしまう。


フランス人との距離感が保たれる理由

先日のホームパーティーには日本人とフランス人がそれぞれ10人近くずついたが、スイス人は私の旦那1人だった。
そしてフランス人たちと話したら、旦那がフランス人を外国人と思う理由がなんとなく分かった。
フランス人はスイス人をやたらネタにしたがるのである。
私も散々このブログでスイスとフランスをネタにしているが、フランス人も他人をネタにするのが大好き。
すぐ隣にある山に囲まれた小さな国は絶好のネタになる。

何を言っていたか思い出してみる。
「スイスは山とフォンデュしかない」
「フランス語が訛っている」
「とりあえず田舎っぺ」
ざっと主要ネタはこんなところである。
以前、フランス人の友達がこんなジョークを私に言った。
「スイス人はカラオケが下手。その理由はスイスで大きい声を出して歌うと山の雪が全部落ちてくるため練習できないから」
これを聞いた私は今の旦那と付き合ったばかりだったのでバカにされたことでちょっと悲しい気持ちになった。(今では失われてしまったこの気持ち。)
しかしこのジョークを他のフランス人に話すとみんな腹を抱えて笑い、ジョークを言った彼を絶賛するのである。

この前パーティーで話したフランス人のうちの一人はスイスに住んだという私にスイスネタをいろいろ話したそうだったが、
「これ言うと怒られちゃうかも・・・他のスイス人の友達に言ったら怒られちゃったから・・・」
と30も過ぎていたずらっ子のような笑みを浮かべるのだった。

スイス人の中にはこんなフランス人を目の敵にしている人たちもいるようで、私の知り合いの1人はフランス人が大嫌いになり2度とフランスの地に足を踏み入れたくないと思っている。
私の旦那はフランス人慣れしているのか、私にスイスの文句をいわれ過ぎて慣れたのか、多少スイスをネタにされたくらいでは怒らない。
彼の愛国心は強く揺るぎないので(決して国家主義者ではない)ちょっと外野にいじられたくらいでは痛くも痒くもないようだ。

そんな彼はパーティーでこんなことがあったよと帰り道で私に報告してきた。
旦那は3人のフランス人を前に話をしていた。
「この前さぁ、下の息子が1歳になったから誕生日ケーキに1本ローソクを立てて火をつけたんだけど、普通なら火傷しないようにとか髪の毛が燃えないようにとか気をつけるんだけどさ、うちの息子は1歳になってもまだご覧の通り髪がないからその心配はいらなかったよ。あはは~」
するとフランス人のうちの1人がこう言った。

「・・・・・悪いけどその話、あまり笑えないよ・・・」

見るとそこにいたフランス人たち3人はみんな仲良く額が後退し始めていた。
それに気づいた旦那はまた1人で笑った。
みんな気心の知れた間柄ではある。
親しい中にも礼儀ありと言いたくなるところだが、彼に悪気は無い。
本当はそれが一番やっかいなのだが、いつもいじられているのでたまにはいいじゃないか。


旦那は家についてからもこのことを思い出し涙を流しながら爆笑していた。
私もスイスをネタにするのはほどほどにしたほうがいいかもしれない。