アルプスから高尾山

国際結婚しスイスに5年住んで帰国した主婦が日本とスイスのギャップに弄ばれる

MENU

在日スイス人は何をする? スイス建国記念日 IN ジャポン

8月1日はスイスの建国記念日である。

本国スイスでは全国各地で花火が打ち上げられ、持っている人はタンスに眠るエーデルワイス柄のシャツやサスペンダーを引っ張り出して身にまとい、老若男女皆どんちゃん騒ぎ、したりする人もいる。


そんな自国の一大イベントの日に遠いアジアの国ジャポンに住むスイス人たちが数人集まった。彼らが建国記念日に開催したスイス風ホームパーティーをレポート。

まずはスイス名産の白ワインで乾杯

スイスではワインの生産が盛んである。ラヴォー(Lavaux)という地区のブドウ畑は世界遺産にもなっているワイン産地だが、スイスの物価が高いためか日本ではそんなにスイスワインを見かけない。

それでもこの特別な日に自国のワインで乾杯すべく、もちろんスイス産の白ワインがこの日のためにストックされていた。


グラスにワインを注ぐスイス人。

そのグラスを手にするスイス人たち。

「サンテ!(乾杯!)」

「ヴィヴ ラ スイス!
(スイス万歳!)」


ワインを味わうスイス人たち。

「セ ボン(美味しい)」

「セ ボン!(ウマい!)」

「セ トレ ボーン!
(チョーうめぇ!)」

「セ トロ ボーーン!!
(うまい、うますぎる!!)」


褒めちぎるスイス人たち。
いつもはフランスやイタリアのワインで妥協しているが、今日は我らが誇るスイスのワインを味わえる。

盛り上がってスイスの国歌を思わず口ずさむが、実は国歌を知っているスイス人は多くない。出だしの歌詞しか知らないので途中からハミングになるがメロディーさえも怪しく、結局カラオケの曲を入れ間違えた人みたいにあやふやになりフェードアウト。
これお決まりのパターン。

猛暑日だろうがチーズフォンデュ

昨日の東京の最高気温は35度。立派な猛暑日だったが出てきたのはチーズフォンデュ。

チーズフォンデュは日本で言うところの『鍋物』のように、一般的には冬や寒い時期によく食べられるスイスが誇る伝統料理。
8月1日はスイス人にとって特別な日なので何としてでもチーズフォンデュを食べなければ。

エアコンの設定温度は17度。
完璧だ。


会場に着いたばかりの人たちは食べる前から汗だくだが、熱々でブクブクのフォンデュをつつく。(いろんな意味で地獄。)

でもスイス人たちはまた「セ ボン」の大合唱。暑かろうが汗だくだろうが久々に食べるフォンデュの味は格別なのである。

そんな彼らを前にすると、私なんかがチーズフォンデュを食べてはいけないと思えてくる。
わざわざ海を越えてやってきたスイスのフォンデュ用チーズ。こんな暑い日にフォンデュかよなんて思ってしまう外国人の私にフォンデュを食べる資格は無い。
この目の前に広がるチーズの海は聖域だ。

邪悪な心を持った人間はこの聖域に近づいてはならない。


そんなことを思いながらスイス人たちがチーズをぐるぐるとフォークでかき混ぜているのを見ていると、肩の辺りが冷えてきた。設定温度は17度だからだ。

もう鳥肌立つまであと一歩。ついさっき「フォンデュかよ」と思ったのは誰だったのだろう。いま、私はフォンデュを欲している。

“チーズのぐるぐる”を見つめていたことによる催眠か。私は今「死ぬ前に食べたいものは?」と聞かれたら迷わず「チーズフォンデュ」と答えるだろう。


そして天の声に促されるまま溶けたチーズの海にフォークに刺したパンを投入。


ぐるぐるぐる。 

ぐるぐるぐる。


こうやってつけて、

うまい!!


この後もうひとつのスイス伝統料理であるラクレット(これも溶けたチーズっす)も始まったが、フォンデュですっかり目が回ってしまった私は旦那と子供を家まで連れて帰る責任感に苛まれやむなく家路についた。


ということで日本にいるスイス人が建国記念日にすることは以下の通りだった。

  • スイス産白ワインで乾杯 
  • 国歌斉唱(Aメロのみ)
  • エアコンを17度に設定してチーズフォンデュ
  • エアコンを17度に設定してラクレット


オーストラリアなど南半球に住んでいるスイス人のほうが、季節が冬であるおかげで建国記念日のチーズフォンデュがより美味しそうで羨ましいと思った夜だった。