アルプスから高尾山

国際結婚しスイスに5年住んで帰国した主婦が日本とスイスのギャップに弄ばれる

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再就職したら他人に興味が湧いてきた

先日もまた職場に着いたと思ったら早々にドロンした私。

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ちょっと前までは私が早退すると言うたびにちょっとかしこまった顔で
「そうですか、わかりました。お大事に」と言ってくれていた上司も、
もうだいぶフランクな雰囲気で
「あらぁ、大変ですねぇ。わかりました」
と言ってくれる。

もう私の早退もだいぶ板についてきた。
(またかよ・・・)と思われても気にしない。
一番またかよと思っているのは私なのだから。



そして私が早退した翌日の朝。
早退したときにちょうど外出してしまっていた他の上司に挨拶した。


私「おはようございます。昨日はまた早退してしまいすいませんでした」

上司「昨日はお子さんどうしちゃったの?また発熱〜?」

私「いえ、今回は長男のほうが額をケガして病院に付き添ってきました」

上司「え、大丈夫なの?」

私「幸い数針縫う程度で済みました」

上司「そっかぁ!大変だなぁ。やんちゃなんだな。きっとそういう子は大物になるよ、うん!」

私「大物ではなく大仁田です。厚です」


とは流石に言えなかった。
でも言いたかった。



パートとして働き始めて早1ヶ月半。

楽しい。

まず何が楽しいかって1人で電車に乗れることが楽しい。イヤフォンで音楽を聴きながら自分の世界に浸れることがこんなに幸せだと感じたことはない。
満員電車だろうが気にしない。大好きなバンドのライブ音源を聴きながら目をつむればそこはライブハウスになる。
陶酔しすぎて満員電車でスーツのオジサンたちの上をダイブしないようにすることだけは気を付けたいところだ。


駅に着いたら会社まで5分ほどの道を歩く。
両手をプラプラ振りながら歩く。音楽に乗りながら歩く私の足取りは軽い。
そこには繋いだ手を振り払って逃げ出す3歳児もいなければ、オムツと着替えでパンパンのバッグもない。

ああ、自由とはこのことを言うのか。



職場では様々なタイプの人たちと一緒に働いている。
そんなに大きな会社ではないが、何だかいる人みんなが様々なバックグラウンドを持っているようだ。
長く外国に住んでいた人、海外経験はほとんどないのに語学が堪能な人。
誰もが知っている名門大学出身者。
日本人のみならず、外国人もいる。

みんながどうやってこの会社で働くに至ったのか。
普段はどんなことに興味があるのか。

みんな仕事のことは話すが、それ以外のことはあまり話さない雰囲気。
だからなおさら気になって仕方がない。

数名いるパートの主婦同士は一緒にランチを食べたりするが、それ以外の人たちはプライベートな話を滅多にしない。
いろいろ気になるがガツガツ話しかけてウザがられたらやだな。それ以前に休憩時間が共有できないから話す時間がないな。
みんな休憩時間に周りの人との接触を断つっていうことは、あまり仕事以外のことで関わりたくない人なんだろうな。
私はしばらくの間そう思っていた。

しかし、スキを見計らって個々にちょっと仕事以外の話題をふってみるとどうだろう。
みんなこちらが驚くくらい雄弁に話し始めるのである。
あれ、みんな関わりを持ちたくないワケではなさそうだ。
私にとっては、そんなにおしゃべりが好きな人が一日に一言も私語を話さず、ランチも黙々と一人で食べていることでストレスが溜まらないのか心配になってしまう。
私は話すのが大好き。話したいことを話さないでいるのが苦痛な人間だ。



そんな私は、会社のほぼみんなが見渡せる位置に座っている。
そして、実はこっそりみんなの言動を観察しながらボケるタイミングを見計らっているのだ。

ネタは仕事のこと限定である。
昼休みでもないのにプライベートな話を持ち出す勇気もない。
あれ、さっきみんなのプライベートが気になるみたいなこと書いたばっかりなのに、何言ってんだ自分。

私は確かに彼らのプライベートなことも気にはなるが、その本心は彼らとお近づきになりたい、もっと気軽な関係になりたいということのようだ。
そのために私はボケ役に徹して、彼らの素の部分を引き出してやるんだ。

仕事ももちろん真面目にやってはいるが、常に周りの言うことにも聞き耳を立ている。
え、これじゃまるでバラエティ番組に出ているひな壇芸人みたいじゃないか。しかもポジションはひな壇の後ろの端っこだ。

私がちょっとフザけたことを言うと、みんな笑ってくれるようになった。
今朝は別にボケたかったわけでもなく、素で曜日を間違えてアタフタしたら、それでみんな大爆笑していた。
ボケ芸人のめんどくさいところは、狙って笑われるのは大喜びなくせに、狙っていない素ボケで笑われるとちょっと悲しくなるところだ。


先日うちのスイス人夫に、一緒に働いている人たちが興味深いという話をした。
彼はその話を聞いてちょっと驚いていた。
私はつい3か月前くらいに、「もう新しい人付き合いはいらない。今いる友達と家族がいればそれでいい」みたいなことをすかしてたらしい。
確かに言った気もする。
そして今は新しく出会った人々に興味深々である。自分の言うことほど信用できないことはない。
そして彼は言った。

「なんか俺のお母さんに似てきたね」


彼のお母さん、つまり私の義母は、それはそれは人と会って関りを持つことが大好きな人なのである。
得意技は電車で友達を作ること。
スイスの電車は基本的にボックス席が多いので、前や隣に座る人と話そうと思えば話しやすい雰囲気だ。
しかし義母は数年前に日本に遊びに来たときも、なぜか山手線の中でメキシコ人女性の友達を作っていた。
ツワモノだ。


そうか。わかったぞ。
3か月前にもう人と会うのがめんどくさいと言ったとき、私はママ友というシガラミに恐怖していたんだ。
子供同士が仲良いから親も気が合うとは限らない。

今だって同じ職場にいるからといって気が合うワケでは決してないんだ。
肝に銘じておこう。
とはいっても3カ月の短期契約の職場なので、私がどんなにウザがられようがあと1か月くらいで皆とはお別れ。

や、やばい。泣きそうだ。



2年間も仕事せず会話ができない子供の相手ばかりしていたからこんなことになったのだろうか。
もうすぐ山手線で友達ができる気がしている。