アルプスから高尾山

国際結婚しスイスに5年住んで帰国した主婦が日本とスイスのギャップに弄ばれる

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スイスの家庭料理って何?

今日、帰国後知り合った友達にスイスの家庭料理は何かと聞かれた。

答えが出ずに5秒間も黙ってしまった。


スイスといえば何?と聞かれれば、もう何十回と答えた単語がすぐに何個か出てくる。

まずはチーズ。
スイスを代表するチーズといえば日本語で表記&発音するのがややこしいGruyère。
グリュイエールとかもっと簡単にグリエールと書くらしい。

現地では私も未だに雰囲気で発音しているが、みんなちゃんと理解してくれる。
チーズ愛の強さのなせる技だろう。

そしてチーズを使った料理と呼べるか微妙なラインの料理たち。
チーズフォンデュや最近日本でも耳にするようになったラクレット



そしてチーズの次に出てくるキーワードはチョコレート。

日本ではベルギーチョコの方が知名度が高いような気がするが、スイスはチョコレート消費量はドイツに続き世界第2位。
世界主要国チョコレート生産・輸出入・消費量推移| 統計・レポート | 日本チョコレート・ココア協会
そしてミルクチョコレートはスイスで開発されたもの。

スーパーマーケットに行くと、そのチョコレートのラインナップに驚く。
日本でもチョコレートを使用した様々なお菓子が販売されているが、スイスでは板チョコの種類が非常に多い。

日本では板チョコと言えばブラックチョコレート、ミルクチョコレート、ホワイトチョコレート以外はあまりピンとこないが、スイスでは、板チョコに色々なものが入っている。様々な種類のナッツ、ドライフルーツ、お米のパフ、唐辛子まで、多種多様なものが存在する。

もちろん板チョコ以外にもたくさんの種類のチョコレートが大々的に設置されたチョコレート売り場に並ぶ。
日本に帰国するたびにどれをお土産に持ち帰ろうか悩んでしまって時間がかかる。



前置きが長くなったが、問題はスイスの家庭料理である。

毎度のごとく言語圏や地方によっても違うと思うが、5秒考えて出てきたのはこれまた発音がしにくいRosti(レシュティ)という名のジャガイモのパンケーキだった。

これは千切りにしたジャガイモをフライパンで焼くシンプルな料理だが、よく肉料理の付け合わせに食べたり、あとはベーコンや目玉焼きなどと合わせてこれ自体をメインとして食べたりする。


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これに何人の日本人観光客が引っ掛かったのだろう。
レシュティは真ん中ですね。



それ以外に家庭でよく食べるものはなんだろう。
ソーセージ類はよく食べる。
あとはグラタンやパスタなど、ヨーロッパのどこでもよく食べていそうなものばかりが頭に浮かぶ。

私の話を聞いた友人は、彼女の知る日本在住のドイツ人が、日本では毎食のように違うものを食べるので疲れると話していたという話をしてくれた。

スイスはドイツ語圏の面積が一番大きく、食文化に関してもドイツから多大なる影響を受けている。

ジャガイモと肉と少しの野菜、そしてチーズがあれば他に何もいらない。
そう考えるスイス人は少なくなさそうである。
私の旦那もそれで幸せだったが、日本で食の楽しみを覚えた。
でもスイスにいれば毎晩のようにチーズを食べては幸せに浸っている。

日々の献立に頭を悩ませている日本の主婦たちは、ドイツ人主婦たちとは旦那の愚痴ネタで盛り上がれないかもしれない。



一方、スイスのお隣フランスでは食の都パリなんて言われてるしさぞかし手の込んだものを食べていると思いきや、以前、私の友人のパリジャンにフランスの典型的な家庭料理は何かと質問したところ、「ステーキとフライドポテト」と答えが返ってきて肩透かしを喰らった。

フランス人だからって毎日のようにフレンチレストランで出てくるような洒落たものを食べているわけではなさそうだ。
そのくせに、フランス人は食事の度に前菜、メイン、チーズやデザートというように、食事がコースになっていないと文句を言う人は非常に多い。

私のフランス人の友人は、私が食事の前に酒を飲みながらおつまみとしてチーズを食べることを良しとしなかった。

そして私がパリの汚いけど行列ができるラーメン屋で汗水足らしてバイトしていたとき、
「餃子を前菜で」と注文する客がやたら多く、初めは私もラーメン屋で前菜なんてフランス人ってとことん気取ってやがんのプププ~なんてバイト仲間と笑っていたのだが、うっかりラーメンと餃子が同じタイミングで出されたりすると怒って帰る客までいたことには閉口した。


食にうるさいフランス人夫に手を焼いている日本人の友人を見ていると、芋とチーズで喜んでくれるスイス人夫で良かったと思う。
こともたまにはある。

旦那の実家で事件は起こる

嫁姑問題は犬も食わない。

義理の両親とうまく付き合っていくにはどうしたらよいのか。
これは人類の永遠のテーマだろう。

元々の性格の合う合わないもあるだろうが、国際結婚だとやっぱハードル上がるっしょ。
いや、逆に違いすぎて諦めがつくパターンもあるかも。


私の義理の両親の性格をざっくりご紹介。
義父 落ち着いていて理性的
義母 明るく社交的でおっちょこちょい


2人とも優しくて私にとてもよくしてくれるのでありがたい。
しかしながら旦那の実家を訪れたとき、そんな彼らの態度に対して腹が立ったときがあった。




ミゾスープ事件

ある日の夕方、彼の両親から食事に誘われ実家にお邪魔すると義母が私に言った。

「今日の夕飯は私たちがあなたのために和食を作るわよ。おいしいミゾスープよ。」

ミゾスープとはつまり、みそスープ。
味噌汁のことを意味する。

話を聞くと彼女の言う味噌汁とは、普通の我々が思い浮かべるそれではなく、うどんを入れたみそ味のスープということだった。

味噌煮込みうどんのようなものを想像する私。


甘かった。



姿を表したのは寸胴鍋に入った大量の熱い茶色い汁、ザルに入った茹でられたうどん、生のほうれん草、生のスライスされたマッシュルーム。


「はい、ではいただきましょう。ボナペティ!」


大きなボールに用意された具材を入れて最後に茶色い汁、これはおそらく味噌汁なのだろうが、
それをかけて召し上がれと言われても、生のほうれん草にマッシュルームが山盛り用意されている時点で私の目は点になった。

サラダうどんの汁ありバージョンかぁと自分を必死に納得させ、消化器官に語りかける。

(いいか、今まで入れたこと無いようなもの入れるからびっくりすんなよ。)


ボールにうどん、その上に控えめに生ほうれん草と、もっと控えめに生マッシュルームを盛り付ける。

そして熱い味噌汁をかける。

この汁でほうれん草たちにちょっとでも火が通って欲しいと思った私のはかない願いは叶わなかった。



「いただきます」

箸でうどんから食べた。
想像した味と違った。
予想をはるかに越えてまずかった。
そしてその理由に気づいた。
味噌のスープには味噌しか入っていない。
つまり出汁の味がしないのだった。

せっかく作ってもらっておいしくないと言うことが無礼なのはもちろん承知だった。

だが今後も彼らが出汁なし味噌汁を誰かに振る舞うのは彼らにとって良くないこと(振る舞われる相手にとってはもっと良くないこと)と判断し、確認した。


私「これ、出汁をとってないですね。お湯に味噌入れただけですよね?」


義母「そうだけど、なぜ?何か変なの?」


私「味噌汁を作る際は必ず出汁を使います。
出汁が出る素材を使うのが一番ですが顆粒でもいいですし…。」


義母「そうなの?あら、じゃあこのスープ好きじゃない?」


私「えっと、正直ちょっと変な感じです」


義母「あらーそうなのねぇ。
うちには出汁がとれるものはないわ。
じゃあスープに日本酒を足したい?」



もうめちゃくちゃである。



出汁のない味噌汁を飲んだことがある人は日本人の中にどれほどいるだろうか。
味噌汁の味を知っているからこその物足りなさ。
友達に裏切られたような悲しい気持ちになる。

そして私が腹立たしさを覚えたのはその味に対してというよりは、
敵が明らかに生のほうれん草とマッシュルームだと思っていたのに実は茶色い汁のほうだったことに対してかもしれない。

まんまと騙された。



しかし彼女はレシピにそって作ったのだと主張した。
家に帰り意地の悪い私はネットで情報を漁る。

あった。

あの切れキャラのゴードン・ラムゼイが似たようなレシピを紹介していた。



お義母さん、ラムゼイのレシピの端折っちゃいけないとこ見事に端折りましたね。
彼は干し椎茸を入れていた。
それだよね、出汁出してくれるの。


私は自分でも嫌気がさすのだが食に関してはちょっとだけうるさい。
決して舌が肥えているとかそういうことではないが、譲れないゾーンがある。

フランス人が白米に甘い醤油をかけて食べるのとか嫌だし。

スイス人家族と和食を食べに行くと、しっかり味付けされているものも刺身用のさしちょこの醤油につけて食べるのとか嫌だし。

私の日本人の親友は私が作ったキムチ鍋をポン酢で食したので私は彼女にしっかり文句を言ったし。


和食を作ってくれた気持ちはとってもありがたいんですが、出汁なし味噌汁は私のNGゾーン内に入ってしまいました。
てか味濃いのが好きなら尚更ぜひ出汁は入れていただきたい。



食に関してうるさいのとはまた別の話ではあるが、私は空腹だと非常に機嫌が悪くなるのはうちの長男とお揃いである。

汗ばむ小児科

暴れる子供を2人連れての小児科はなかなかスポーツである。
 
ただでさえ日本の子育てシステムに不慣れなため何をするにも過剰に緊張してしまう。
本人なりに必死で元々そんなに無い『気』を使おうとする。
 
スイスの小児科では、息子の名前を言えばすべてのことは自動的に進んでいった。
まず前回の記事にも書いたがは母親がペンを握る機会はない。
初診でも問診票もかかなければワクチンの為のアンケートもなし。
すべては医者の質問に口頭で答えるのみ。
そして体温のみならず体重も身長も毎回のように測る。
 
ズボラ母代表の私としては大変ありがたい。
 

ところがここは日本。紙社会。
何をするにも書類が必要なことがやたら多くて今回帰国し改めて面食らい祭り。
 
緊張して火照る私にとってはサウナ並みに暑い小児科の待合室。
暴れん坊長男は待合室のスクリーンに流れるアニメのDVDに夢中。
よし。落ち着いて仕事ができそうだ。
 
問診票も書き終え一息つき、受付に持っていく。
年配の女性が想定外の質問を投げかけてくる。
女性「えーっと、お子さんの生年月日は~?」
私「(えっ、問診票に書いたばかりだしっ!)
はい、えっとぉ、しょ、しょ、しょうわ~」
女性「え?あっはっはっは!昭和じゃないですよねぇ~!!」
私「あ、じゃないですよね~昭和は私ですね~」
 
(ちっくしょー帰国してから必死で和暦で我が子2人分の生年月日覚えたのにぃ〜。)
 
待合室に響き渡る受付のおばさんの笑い声。
すでにサウナの中なのにその中で激辛カレーを頬張ってしまった人並みに汗が噴き出る。
まぁいいや。こんなのベッタベタな誰にでも起こる間違いよ。
 
 
 
診察室に突入である。
小児科医と看護婦が2人して息子のあっち押さえてこっち向かせてだのしきりに私に指示を出す。
看「お母さん、左手でお子さんの背中を抱えて右手で頭を抑えてください。」
すでに軽めパニック。
アカ上げてっ!シロ上げてっ!
ってやつやらさせてる人同等のパニック度。
 
子供の機嫌を取るために医者のデスクに置かれたとなりのトトロのオルゴール。
メロディーの速度も速けりゃちょこんと付いているトトロも超高速回転。
私の気を煽ってくる。
 
小「インフルエンザは出てないねぇ。風邪だな。
今の体重はいくつぅ〜?」
私「(よし、予習して来たぜぇ!8.3キロ〜!)
 
は、はい。
(8.3 8.3 8 3 はち さん
はちさん…
 
さ、さ、3.8キロです!」
 
看「え、えっとぉ〜、この子がですか・・・?」
 
 
3.8キロなんて産後1カ月足らずの新生児の体重である。
うちの子は8カ月。
 
ちーん。
 
もう疲れた。帰りたい。
 
 
 
診察を終え待合室に戻ると、再びDVDに釘付けな長男。
よし、保険証も受け取ったしさっさと帰ろう。
「はい、帰るよ〜」
長男動く気配なし。
怒鳴るものか。
ここはさっきのベタでダサい昭和ミスを払拭すべく、小児科の待合室で子を思いやる母アピールモードに入る。
ここは彼が大好きなおもちゃいっぱいの子供のパラダイスに誘い出してスマートに退散するとしよう。
 
気合の一声。
 
私「〇〇〜、今から武道館行こうかぁ⁇」 
長男「ブドウカン⁇ えぇ?
ジドウカン行くのぉ〜⁇児童館なのぉ?」

 
誰も聞いてませんように。
 
武道館て。
何ででしょう。毎回のように児童館と言おうとすると口が勝手に武道館と動くのは。神様、私何か悪いことしましたか。
間違える度にさぶいダジャレ言ってすべっちゃった人の心境になる。もう自分に不意打ちを喰らわされるっていう訳わかんない状態。
10年以上前、何故か友達のゲイカップルと私で日本武道館にクリスティーナ・アギレラ観に行ったなぁ。。
 
ふぅ。
次に小児科行くときはどんなボケかまそうか考えておかないと。
 

スイスにいたときは小児科医が爽やかイケメンすぎて、それはそれで汗かいてたな。
 
先生、元気にしてるかなぁ。
 
 
 

帰ったら気づいた ここが良かったスイスの子育て事情

日本に帰国することが決まり、さぞかし嬉しいだろうと周りの友人たちに言われた。

家族の近くに居られることと、美味しい日本食が食べられることはとても嬉しかったが、不安もあった。
それは子育てに関することだった。


スイスで妊娠し出産した私は日本での子育て経験がない。
そして我々の移住先はボーダーには近いが東京都内。
子連れで一時帰国したときは電車に乗るたびに非常に緊張したのを思い出す。
お腹に抱っこしている我が子の足がうっかり隣に座っている人を蹴らないように、私の汗ばんだ手でがっちりとその小さな足を握りしめて私の身体に密着させて座った。



こんなに緊張し怖がっていたのはネットの情報のせいだった。
東京でベビーカーを押しているとどのような扱いを受けるのか、ベビーカーを折りたたまずに電車に乗るのはアリなのかなど帰る前にいろいろ調べたが、目につくのはネガティヴな情報ばかり。
でも元々ネットで調べようと思った理由は日本の社会は子連れに冷たい印象があるからなので驚きはしなかったが、やはりそうかと改めてガッカリ。


だが実際に子連れで電車に何度か乗ると席を譲ってくれる人が多く、それには驚いたのと同時に、人々の思いやりの心に触れてとても嬉しかった。



ヨーロッパは子育てに良さそうなイメージを持つ人が多いが、子育て支援が充実している北欧のイメージからの影響だろうか。
スイスも北欧には敵わないものの、実際にスイスと日本でどちらが子育てしやすいと感じたかと聞かれたら私はスイスと答える。
それぞれに良さはあるのでこれは好みの問題だと思うが。





スイスの子育てここが良かったベスト3

①子連れの親が威張っている


スイスではベビーカーは大き目サイズが主流。
タイヤも大きめ。
東京に比べたら混んでいないとはいえ、そこそこの混み具合の通勤時間だろうがその大型車でバスにもメトロにもガンガン乗る。

バスに乗る際に「ベビーカーは優先でーす!」とぎょっとするほど大声で叫ぶ母親を見たことがある。
周囲の人は彼女を見て何を思うか知らないが、文句も言わずにささーっとはける。

そして私は一度ベビーカーがらみでバスの運転手に怒られたことがある。
バス内でベビーカーを置く場所は安全を考慮して指定されているのだが、そのときは混んでいる時間帯でそこにはすでに2台のベビーカーがあった。
本来なら正しく詰めて置けば3台停められるが、周りに人も多くすんなり3台目の停車位置までたどり着けそうもなかったので、仕方なく入り口付近にいた。
するとそれに気づいた運転手が私に向かって叫んだ。

「そこにベビーカー置いてるお母さん!あなたは周りの人にどけって言う権利があるんだからそんなところに突っ立ってないで奥まで行きなさい!
守るべきものは子供たち!
大人は面倒はみれませんので勝手にやんなさい」

周りの大人たちは笑いながらこれまたささーっと場所を空けてくれた。

東京ではこのような場面に遭遇することは今のところなさそうだ。
ベビーカーは混んでいる時間帯は遠慮しなければいけない立場なのだから。

人口密度が高いとはいえ、子連れで外出するには時間帯を選ばなければいけないのは時々悲しい。
そして電車で出かけるたびに100回ぐらい「すいません」を言うのだ。



②字を書く機会が少ない


てか日本が多すぎてビックリ。
児童館では入館の際にリストに子供全員、下手したら親の名前も書くことを求められる。
そして小児科では当然ながら問診票を書き、驚いたのはワクチン摂取のたびに1つのワクチンにつき一枚、質問がびっしり書かれたアンケートを記入しなければならないこと。
そして一枚ずつに氏名、住所、電話番号と、重複した情報を書かなければならない。
今度は一時保育。
これも預けるたびに氏名、住所、電話番号。
さらに緊急連絡先まで。
そんな預けるたびに変わらないっちゅうねん。

これは国を出なければなんとも思わなかったことかもしれない。
面倒だなと思うのは、スイスでは外出先でペンを握って何かを書く機会が非常に少ないと思う。
今思い出そうとしてもサインをするとき以外には何も浮かばない。
小児科でも子供の名前を言えば済むし、熱も看護師が測るし、日本に比べるととてもラクチン。


③親の自己犠牲はほどほど


日本でも最近は母親に関する歌がバッシングを受けたりしているので変わりつつはあると思うが、それでもやはり母親はこうあるべきという世間体を気にしている母親が多いのではなかろうか。
何となく自分のための楽しみを我慢しなければならないような気がしたり。

スイスで周りにいた同年代の親たちを見ると、子供を預けて夫婦で食事に行ったり子供を連れてフェスティバルやコンサートなどのイベントに行ったり、親たちも子供ができたからといって自分たちのやりたいことを過剰に我慢していない印象を受けた。

小さい子供は遠慮なく預けて海外旅行に行ったり、ちょっと驚いたのは生後2カ月になったばかりの赤ちゃんがキャンプに参加していたり。

イヤがる子供を無理矢理連れ出すべきではないが、心配し過ぎて何もできずにストレスを溜めるのも考えものではなかろうか。

と、出かけるのが大好きな私は自分に都合の良いように考える。

行く前に心の準備を! スイスのカラオケ事情

ヨーロッパでカラオケに行くとなると、カラオケスナックのように他のお客さんたちの前で歌うスタイルが多いのではないだろうか。

今から10年近くも前にパリのオペラ座の近くで日本式のカラオケボックスに行ったことがあるが、それ以外に個室のものは私は残念ながら見たことがない。

しかし何を隠そう私は無類のカラオケ好き。

つい先日は帰国したての喜びと勢いに任せうっかり1日で3回行ってしまった。



そんな私はスナックで皆の前で歌わなければならないとしても、ちょっと恥ずかしい気もするが歌えてしまう。
今後二度とご一緒することはない方々だし、文化も違う外国人のお客さんがほとんどだし、上手く歌えなくたってシラけられたって旅の恥はかき捨てるのよと我に言い聞かせ今まで何度か海外のカラオケで歌ってきた。



そして今回はスイスのカラオケに挑む。

まだシラフだし通りから店内が見えない作りになっているためちょっと不安だが、店で2杯くらい引っ掛ければエンジンがかかるだろう。


店内に入ると今まで行ったカラオケスナックとは明らかに違う。
そこはスナックというよりレストランで、アカの他人の歌を聴きながら普通に食事を楽しんでいるお客さんもいる。
割と広く50名以上は入るだろうか。
照明は妙に明るい。
そしてステージでリズムをとるためか手を振り回し熱唱するオジサン。


ステージかぁ。
しかもステージには綺麗にウェーブした赤いカーテンが下がっており、その前で歌わなければならないようだ。

今まで行ったことのある店では小さなステージはあっても皆そこには上がらず自分の席に座ったまま歌っていた。


ちょっと緊張してきた。

まだステージに立ってもいなければ歌いたい歌すら決めていないのに。
緊張するのは自分を良く見せようとするからと何かで読んだことがある。
そう考えると自分の自意識過剰ぶりに1人で恥ずかしくなる。
そして赤いカーテンの演出がクラシックすぎて恥ずかしさを助長するわ。



さて、オジサンが歌い終わると、なんとDJ風の司会者まで出てきた。
全身黒でキメた体格のいい30代くらいの男性である。
耳たぶには親指より太いゲージサイズのこれまた黒いピアスがぶら下がっている。


「は〜い、◯◯さんでしたぁ〜‼︎メルシー‼︎」


その店では新しい客がステージに上がるたびに曲名とその客の名前を紹介するDJがいた。
これは予想を遥かに超える恥ずかしさである。

そしてステージに上がる客のジャンルは様々で、常連客らしい自己陶酔型からグループで照れながら歌う外国人留学生グループまで。
歌のジャンルもフランス語のシャンソンを熱唱する人もいれば、最近のアメリカのアイドルの歌を歌う人も。




私は2杯目のビールを飲み終えようとしている。

さて何を歌おうか。

みんな好きな歌を好きに歌っているに違いないのに自意識過剰な私は客層を気にする。
リズムに合わせ楽しそうに体を揺らしながら聴く人もいれば口ずさむ人たちも。
中には歌に負けじと大声で友達と話している人も。
全体的に皆この店を選んで来ているだけあって、カラオケを楽しんでいる雰囲気の客が大半だった。


そしてステージの真ん前を陣取るのは若いアフリカ系、つまりは黒人グループである。
この人たちはやたらリアクションもクールで、あまり表情に笑顔がない。

何でこの店に来て、しかもここに座ってしまったんだろう。
例えば彼らの前でR&Bなんて歌ったら喜ばれるのか、はたまたブーイングを受けるのか。
全く正解がわからない。



この先タイムマシンが発明される日がきたら、私はそのときの自分に質問しに戻るだろう。
何故そんな黒人グループの真ん前で歌うために選曲したのがスパイスガールズだったのか。
今となっては理由はわからないが、私は曲の入力までを担当するDJに『スパイスガールズ、Wannabe』と書かれた紙を渡した。
書かれたってか自分が書いたに違いないのだが、私よ、何故それを選んだ?
紙が自分の手を離れた瞬間に後悔が始まった。




そして15分ほど待っただろうか。

DJが私の席までやって来てカラオケの音にかき消されぬよう耳元に話しかけてきた。


「次はあなたの番です。準備はいいですか?」


「は、はい。じゅ、準備ばばば万端です」


「1人で歌えますか?ヘルプは必要ですか?」



ヘルプ?アジア人だから英語が苦手だろうと思われたのか、DJだけにラップのパートをやってあげるぜっていう親切な申し出だったのか、その真意は謎だ。
ラップなら私がやりたかった。
カラオケでglobeを入れるのはKeikoではなくいつだってマークパンサーをやるためだ。
ちょっとDJに敵意が芽生えた。
これ、今になって考えてみれば私は1人でメンバーが5人もいるグループの歌を歌おうとしていたのだから彼はただ的確なオファーをしただけだったのだ。
緊張のせいでテンパった可哀想なアジア人客は答える。



「ののノン!メルシー!」




そして私はDJに名前を呼ばれステージに上がった。
その後の数分間で起こったことのうち思い出せるのは、目の前の黒人たちがちょっと身体を揺らしてノッてくれていたことと、誰かが「振りも付けて〜」と叫んで会場を盛り上げてくれたこと。


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無事に私の初舞台は幕を閉じた。
歌っている最中の記憶はあまりないが、ツレがちゃっかり撮っていた動画はパソコンの中に入っているはず。


今のところ見返す予定はないが、削除する予定もない。

日曜日に思いっきり買い物できるの⁉︎ 日本のここが素晴らしい②

大都会東京からスイスに引っ越した人の多くはしばらくの間そのギャップに戸惑うことになるだろう。
町の風景から食生活、飛び交う多言語など違いを挙げればキリがないが、私が1番ショックを受けたのはスイスの日曜日のことだった。


スイスに引っ越して初めて迎えた日曜日。
散歩にでも行こうと外に出た私たちは愕然とした。
近くの広場にも通りにも人っ子ひとりいなかったからである。
昨日は土曜日で市場もあり買い物する人々でごった返していたのに。
通りの店も全て閉まっている。
ふとドラゴンヘッドの映画が頭をよぎった。
人生の中で唯一劇場で金返せ!と叫びたくなった映画。

それはいいとして、何か事件でも起きて家から出るなとか警戒アラート発令中だったらどうしよう。
不安になりがらも大通りまでたどり着くと交通量はだいぶ少ないがたまに車は走っているし、数名の歩行者もいた。だが店はやはり閉まっている。
隣で旦那があーそういえばこんな雰囲気だったなぁと久々の故郷の日曜日を懐かしんでいる。

何とスイスでは日曜日は役所や郵便局は当然のことながらスーパーマーケットや衣料品店などほぼ全ての店が閉まっている。
例外は大きな駅の構内や近くにある店舗。
そしてパン屋は午前中だけ開けているところもあったりする。
レストランやカフェも開けているところもあるがそんなに多くはない。
以前お隣の国フランスはパリにワーホリで一年住んだが、さすが一流観光地。
閉まってる店もそこそこあったが人の多さゆえに寂しさは感じさせなかった。




日曜日にウィンドウショッピングどころか食料品の買い出しすらできないなんて、日本人ならにわかに信じられない、いや、信じたくない話。
けれどどんなに目をこすっても店は閉まっている。

引っ越したばかりの頃は土曜日のうちに多めにパンを買うのをしょっちゅう忘れ、日曜日に駅の近くまでパンを買いに走った。



そんな訳で日曜日は駅の周り以外は町中で人をあまり見かけない。
では人々はどこにいるのか。
旦那が言うには夏は湖沿いや山、冬は山でスキー。
夏になって湖に行ってみるとなるほど、泳いだり水着姿で日光浴をしたり、ワインやビールを飲みながらBBQをしたりする人々で賑わっていた。

これは後に私の夏のスイス生活における1番の娯楽となる。
だって居酒屋とかないんですよ奥さん。
お友達と飲んで語り合いたければ家か湖畔か。
この物価高の国でレストランで思いっきりお酒を飲めば家計は火の車まっしぐら。


私はある晩、スイスに居酒屋とカラオケが無いことが無性に悲しくなり真っ暗な夜の街で泣き叫んだことがある。
最初で最後のホームシックな瞬間であった。
夜の街が暗いのはこれまたびっくりレストランやバー以外のほとんどのお店は午後7時閉店だから。
夏は日が長いとはいえ、東京の夜の風景に慣れている者にとってはショックが大きい。
コンビニなんてもちろんない。たまにインド人やアラブ人の営業する商店が遅くまでやっていたりするが値段はもちろん高め設定。
もう日本のコンビニの素晴らしさたるや。
一時帰国するとコンビニを見かけるたび足を踏み入れてしまう気持ちは海外在住の方にはお分かり頂けるのではないだろうか。
帰るたび新発売やリニューアルされたお菓子や飲み物がキラキラ輝いて私を誘惑する。
コンビニは帰国者にとってアミューズメントパークなのだ。


おっとコンビニに話を持っていかれたが、このスイスのスーパーの閉店時間の早さについて旦那にやつ当たって文句を言ってみると、その分開店も早いので特に問題はないとか。
そしてお店で働く人にとっては良さそうだ。
サービス業でもオフィスワークしてる人と勤務時間帯はほぼ同じ。

でもね、たまにはダラダラとおつまみ食べながらお酒飲んで、ほろ酔いでカラオケ行っちゃう〜?なんて言いたくなる。

そして実はその町にカラオケは存在した。
ということで次回はスイスのカラオケ初体験レポート。
ああ興奮がよみがえる〜

スイス人と付き合い始めてビックリしたこと 〜体質編〜

よく欧米人は体臭がキツイとか毛深いとかいうウワサを耳にするが、果たして実際のところどうなのだろうか。
くだらない、そんなのどうでもいいと言いつつ実はちょっとだけ気になっているあなたの参考になりますように。
ちなみに私は残念ながら旦那以外のスイス人男性とお付き合いしたことはないので、今回は単にある1人のおそらく平凡なスイス人男性の肉体に関して私がビックリしたことを述べることとなりますのでその点ご了承いただきたい。



①体臭の真実

結論から言うと一般的な日本人のそれと比べると気持ち強め。
どの程度かを文面で伝えるのは難しいが、彼は季節に関わらずデオドラントを毎日必ず使用する。
夏場だけデオドラントスプレーをシューっとひと吹きしていた私は、彼が一年を通して1日たりとも欠かさず使っていたことに驚いた。
旅行先でデオドラントを忘れたことに気づくとすぐに買いに走る。
愛用しているのは先にボールが入っていてコロコロ回るタイプのもの。
スプレータイプは効果が薄いとのこと。

初めて彼のTシャツを洗濯し干したとき、脇の部分が全て変色しゴワゴワと硬くなっていることに気がついた。
最初はわからなかったが、これはデオドラントの中に含まれるパウダーのせいらしい。
スイスにいたときはパウダーフリーという商品も売られていた。
そうなるまでデオドラントを頻繁に塗り塗りするスイス人は少なくないのだろう。

しかし体臭がキツめなことを自覚している彼は私よりもずっと清潔で、いつもデオドラントの良い香りを漂わせているため彼の体臭に悩まされたことは一度もない。
むしろ外国のデオドラントの香りは嫌いではない。
香りといえば、洗濯用洗剤の匂いも強め。
これも彼ら欧米人の体臭を意識してのことなのかもしれない。



②ウララそんなとこまで体毛

手の平と足の裏以外の全てに生えていると言いたい衝動にかられるが、もちろんそんな事はないことは顔を見ればおわかりいただけるだろう。
ただ、毛というものは縮れ具合などに多少の違いがあるとはいえ、体のどこに生えている毛でも全ては同じ『毛』である。
何が言いたいかというと、毛は生えている場所によってその呼び名が変わるのである。
つまり鼻に生えるのは鼻毛、口の付近に生える毛は髭などと名付けられている。
ところが私の旦那の身体の表面を覆う毛の中には、何毛と呼ぶべきかわからない、当の本人たちも自分は何毛に属するのか解らず、自らのアイデンティティーを確立できずにいる者たちが多くいる。

床屋さんは髪を切り進め彼の襟足にカミソリやバリカンを当てるとき、そのTシャツの襟の中までまだらに続く毛難民を目で追い、襟足がどこまでかを決めなければならないプレッシャーに手に汗握るだろう。
目を凝らし数ミリでいいから毛の無い境界線が見えないか探すだろう。
なんて要らぬ心配をしてしまう。
いや待てよ、相手はプロだ。
毛があろうが無かろうが骨格的に襟足はここまでというラインが存在するのかもしれない。


そして同じような状況は身体の前側でも繰り広げられる。
鼻毛口髭顎髭◯毛首毛◯毛胸毛…(以下省略)と体毛続くよどこまでも。
きっと日本人男性でもこのくらい毛深い人は割といるのかもしれない。
ただ日本人の毛深い男性との違いは、こんなに毛むくじゃらなのに毛の色が明るめなせいであまり毛深いイメージがないこと。
そしてもちろん抜け毛は落ちるが床にあると私の黒い髪の毛の方が目立つのが悔しい。



③え、今あなた耳から何出した⁈ ※汚い話が苦手な方は以下ご注意ください。

体臭や体毛は想定内だったが、これは全く予備知識が無かったことだったのでショッキング度はぶっちぎりだった。
ではちょっと汚い話なので手短に。
ある日彼が白い綿棒を使って耳掃除しているのが何となく視界に入る。
そして彼が次の瞬間その手に持っていた綿棒を耳の中から出したら綿棒の先端が赤く染まっていた。
うわっ、いじり過ぎて血が出ちゃったの⁈いや、それは紛れもなく彼の耳垢だった。
そして初めて欧米人の耳垢が我々のそれとは質感も色も全く違うものだと知った。
ねっとり湿っぽくて赤褐色。
私は赤味噌に似ていると思う。

私のかわいい2人の子供たちも見事に耳垢は湿っている。
色はまだ長男が田舎味噌で次男は白味噌。
秋葉原で耳かきしているお姉さん達も欧米人客を相手にしたことがあるに違いない。
追加料金なしであれはナシでしょなんて文句が聞こえてきそうである。