アルプスから高尾山

国際結婚しスイスに5年住んで帰国した主婦が日本とスイスのギャップに弄ばれる

MENU

私の早退日記

日曜日の夜、私はサザエさんシンドロームに陥っていた。
その理由は旦那が一週間出張で家を空けるから。

“ワンオペ”デビュー

私は今日から一週間、パートとして働きながら一人で家事と子供の世話をすることを強いられていた。
いつもより1時間早く起きて弁当を作り、子供を起こし着替えさせ、朝食を食べさせ、歯の仕上げ磨きをし、自分の化粧もし、怒鳴らず急かさず余裕を持って家を出るのが目標だ。

朝の余裕を生むものは前夜の準備。
今日はいつも子供たちと尋常でないテンションでじゃれ合う旦那もいないことだし、有意義な会話をしながら夕食をとり、子供たちに普段は制限しているテレビを見せご機嫌取り。
サザエさんを鑑賞する息子たちの隣で、私はシンドロームしながらカツオが『嘘も方便』を会得していることを知り、そんな小学生はちょっとイヤだわと思っていたら長男がちょうどそのタイミングで「これもう見たくない」と言ったのでテレビタイム20分足らずで終了。わかってんな息子。

その後は楽しく親子三人で有意義な会話をしながらお風呂に入り、明日は早起きだからもう寝ようと100回ぐらい言って、まだまだお風呂で遊びたがる子供たちを退出させ、次男がその辺に放尿する前に素早く紙おむつを装着し、もう明日着る服を着せてしまいたい気持ちをギリギリのところで抑えてパジャマを着せた。

あとは歯磨きを済ませ、ウグイス嬢並みに上等な発声で絵本を3冊読み、旦那には5年以上見せていないであろう、とっておきの優しい笑顔で2人の息子に私の彼らに対する愛を伝え、おやすみと言って笑顔を崩さずに舞台袖にはけた。

なんという手際の良さ。
親が2人いると余計に時間がかかるミステリーの謎解きはさておき、弁当の下準備をして、元喫煙者のせいでか何でか知らないがやたら目立ちたがる私の鼻毛ちゃん達をカットした。
前にも書いたが、旦那がいないと鏡の前にいる時間が増える。

www.heidima-blog.com

当日の朝

そして今朝、6時に起床。
シナリオは完璧。
あとは子供たちの気持ちをどこまで持っていけるかがカギ。

緊張のせいか変な夢を見た。
義理の両親(スイス)が私の実家(とうほぐ)に滞在しに来ていた。
私の母は、朝食にクジラの塩焼きを出した。
私は世間や国際事情に無頓着な母にちょっと憤慨。
そしてすぐに夕食の時間になり、出てきたのはイルカの塩焼きだった。
これはやりすぎだ。イルカなんて私も食べたことないのに。
おかしいことにクジラもイルカも直径が15㎝ほどの個体で、丸焼きだった。

これは夢だが、実家に初めて私の旦那(当時は彼氏/来日1年目)が来たときに、私の母が朝食に山盛りの天ぷらを出したのは紛れもない事実である。


変な夢から目覚め変な気分で息子の弁当を作る。
それが終わったので子供たちに声をかけるが起きる気配は全くなし。10時間以上ぶっ続けで寝られることが憎ら、いや、羨ましい。
こんなとき、私はしめしめと息子たちの着物(パジャマ)を剥ぎ取り寝たまま着替えさせてしまう。

そんなこんなしているうちに、息子たちが目を覚まし、まあまあな機嫌で朝食を食べ始める。

その後の記憶はほぼ無いが、汗ばみながら次男を保育園に送り、ヒーヒー言いながら長男を幼稚園に送った。
あとはファーファー言いながら自転車を駐輪場に停めて無理やり鼻呼吸しながら駅のホームまで移動し、なまはげの赤い方みたいな風貌で電車に乗る。


今朝、電車に乗った瞬間の達成感ったらない。
iPhoneのプレイリストだって最近めっきり聞かないようなやつ聞いちゃう。
ビョークだ。ハイパーバラッドだ。ブンブンだ。


職場に着くと、やっといつもの日常が訪れた感じ。
いつも通りに職場の人たちに挨拶をし、自分の席に着いてPCを起動する。
まだ汗が引かないので、下に着ているシャツにアイロンかけていないのは知っていたがセーターを脱ぐしかない。


加湿器さながらにむんむんと蒸気を発しながら仕事を開始し、しばらくたってから携帯のバイブ音が鳴っているのに気付いた。


いつもの嫌な予感。


最近の私の特技、早退


そして私は今日、また2018年ベスト・ソータイストに一歩近づいた。

www.heidima-blog.com



仕事開始から1時間半後、長男の幼稚園から連絡があった。
今回は発熱によるお迎え要請ではなく、息子が転んでおでこを切ったので病院へ付き添ってほしいというものだった。
旦那は遥か彼方。私しかいない。何より出血しているということで心配だった。

また毎度の如く、周りの社員の方々に深々と頭を下げる。申し訳なさでどちらかといえばつり気味な私の目は今日ヒュー・グラントくらいまで下がったはずだ。


パートの私は働かないと給料が出ない。
息子も心配だが、給料が減るのも痛いなと考える私は冷たい母親なのかなぁなんて、さっき乗ったばかりの電車に乗りながらぼんやり物思いに耽る。



息子は結局、額を4針縫うケガをしていた。
転んだ先に運悪くコンクリートの縁石のようなものがあったらしい。
幼稚園の先生たち計4名に次々に謝られた。人様の子を預かるなんて気苦労の多い仕事に違いないのだ。
いろいろな意見はあるだろうが、幼稚園や保育園で子供たちに絶対にケガをさせないなんて無理な話。しかも我が子のことは私がよくわかっている。
まっすぐ黙って歩いていたら逆にお腹でも痛いんじゃないかと心配になるような子だ。


そんな彼は病院のベッドで私を含め大人の女性3人に押さえつけられながら麻酔の注射を打たれ、泣きはしたが思ったよりも暴れなかった。
先生に額を縫われている最中も、最近彼の中で流行っているウ〇コ系の造語を言って看護婦たちを笑わせていた。
施術の最後に、おでこにちょうど切り餅サイズの分厚いガーゼを当ててくれた。

頭を打つと脳へのダメージが気になるところだが、先生が丁寧に説明してくれたのでそんなに心配はしていない。
頭痛がしたり痺れがあればこんなに元気に走り回れない。むしろ頭打った人並みにぐったりしたのは私の方だった。
昨夜からの緊張と興奮が突如心配に変わり、それも落ち着いて何だか気が抜けた。


いや、戦いはまだ終わってはいないのだ。
おでこに切り餅をつけてスヤスヤと寝ている彼を甘く見ると明日の朝に痛い目にあう。


出張から帰ったら旦那は長男の傷を見てショックを受けるに違いない。
でも傷は勲章だし、思い出だ。
私は自分の薄くなって消えそうな気配を見せる手術跡を撫でながらちょっと寂しくなったりすることさえある。
そして小さいころ姉と喧嘩して彼女にケガを負わせ、それが今になって家族で飲むときの酒の肴になる。(ごめんよお姉ちゃん!)

男の子だし、この先もっと派手にケガをすることもあるに違いない。
今日のは人生最初の記念の4針だ。

追いつけ追い越せ、大仁田厚。

子供のために早退する母親に罪は無し

パートで働き始めてまだ一カ月足らず。
一昨日また保育園から子供が熱を出したと呼び出しがあり、私の早退は気づけば4回目。

面接の時点で私は明確に伝えておいた。

「最初は週3〜4日の勤務を希望しようと思っていましたが、どっちみち子供の発熱やらで休まざるを得ない日があると思うので、ご迷惑をおかけすることを前提に週5日間勤務を希望します」と。

その条件でもありがたく採用していただき、そして有言実行、まだ一カ月と経っていないのに4日も早退している。

あるときは会社に着いて1時間ちょっとで保育園から電話。
そして一昨日は終業時刻まであと2時間というところで電話。


一応、旦那に迎えに行けないか聞いてみるが、論文の締め切りが近いから無理という返事。

私が迎えに行くしかない。
パートだから働く時間が減れば給料も減る。
しかし今の私はそれを残念とは思わず、むしろパートで良かったと思う。
これで正社員なら申し訳なさすぎて居たたまれない。

上司に伝えなければ。

気が重い。


私:「すいません、また子供が熱を出したと保育園から連絡がありまして、大変申し訳ないのですが早退させていただきたいのですが」

上司:「そうですか。わかりました。お大事にしてください」

私:「ほんっとうに度々でほんっとうに申し訳ありません。お先に失礼します。ほんっとうに申し訳ないです。すいません」


申し訳ない顔をし過ぎて最近ますます眉間のシワが濃くなったので、嘘か真か知らないがハリウッド女優御用達というシワ取りシートを眉間に貼って寝ている。


しつこいようだが私は勤務開始して一カ月足らずで4日も早退している。
面接のときに早退や欠勤することもあるだろうと思っていたが、なんとなく一カ月に2、3日かなと思っていた。

甘かった。
早退は欠勤よりもタチが悪い。

私の職場の従業員数は決して多くなく、その中にはパートの主婦が数名いて、週に3日しか出勤していない人も何人かいるので、誰かが欠けていても全く違和感はなく、それが当たり前。
なので朝から欠勤していてもそんなに目立たない。

しかし早退となるとどうだろう。
朝の出勤時に皆に挨拶し、ミーティングをし、そこからの早退は欠勤より目立つ。
無言で帰るわけにもいかず、皆に「息子が発熱したため早退させていただきます。ほんっとうに申し訳○×△※ ○×△」
と言って腰を折ったまま退散する。


辛い。心苦しい。
社長も理解がある人で、
「子供はそうやって免疫つけてくんだもんな」
と言ってくださるが、この先これが続いたら言うことがなくなるだろう。

私だってもう謝罪の言葉が見当たらない。
今は「度々申し訳ありません」

次回は「度々度々申し訳ありません」


早退。

また早退。

この勢いじゃ私は2018年ベスト・ソータイスト受賞間違いなしだ。

なんなら2019年を待たずにさっさと殿堂入りさせてくれ。

私が珍しく終業時刻近くまでいると、

「あれ、今日は◯◯さん早退してないんすか?」


サウイフモノニ
ワタシハナリタイ



しかしいつも腑に落ちないのが保育園を早退させられた息子が38度5分の熱があっても元気いっぱい暴れ回ること。

保育園の体温計が壊れているんじゃないかと疑いたくなるが、なるほど、頭を触ると確かに熱いのだ。


それが一昨日は連絡を受け保育園に息子を迎えに行くと、いつもと違ってぐったりしている息子がいた。
顔は真っ赤で目は虚ろ。
それでも促されずとも保育士さんたちに自らバイバイをする一歳の息子。

悲しいかな、誰も見ていない。



いつもの発熱と違う様子に心配になり、その足で小児科を受診すると、しっかり「溶連菌」という菌をもらっていた。

抗生物質を飲ませると一晩で熱は下がり元気になった。



この調子なら月曜日は保育園に行けそうだ。
私も仕事に行けそうだ。


ベスト・ソータイストへの道のりは険しい。



【バイリンガル子育て】なかなか攻めてるフランス語の絵本

私がハーフの子供を連れているとよく聞かれることがある。
それは「家では何語で話しているのか」ということ。

国際家族の言語事情

私:母国語は日本語。子供たちに日本語で話し、主人にはブロークンなフランス語で話す。

主人:母国語はフランス語。子供たちにも私にもフランス語で話す。日本語も結構話せると思っていたが、先日「やたら」の意味を聞かれて知らなかったことに驚いた。

長男:母国語は日本語とフランス語のバイリンガル。私には日本語で、主人にはフランス語で話すが、最近はフランス語の文章に日本語の単語が混ざることが多い。

次男:「おーじょ(どうぞ、どうも)」と「あっち(熱い、おいしい)」と「うっ(それ)」のほぼ3単語のみを駆使してこの世知辛い世を生き抜く。


ここで浮き彫りになる問題点は、子供たちのフランス語力が伸び悩んでいることである。

長男は3歳になる前までスイスのフランス語圏で生まれ育ったため、日本に越してくるまでは私が日本語で話してもほぼフランス語で受け答えしていた。それが日本に住み始めてからメキメキと日本語会話が上達し始め、日本生活丸1年が経とうとしている今では日本語のほうが流暢。主人にはフランス語で話し続けているが、語彙が増えていないのがちょっと心配なところ。

一方の次男は、まだ1歳なのであまり意味のある単語は出てこないものの、それでも出てくる単語はすべて日本語よりだ。ある日、仕事を終え保育園にお迎えに行くと、保育士さんが興奮気味にその日の出来事を伝えてくれた。「今日のお昼ご飯は『うどん』だったんですけど、○○(次男)くん、すごい勢いで食べ終わって、そのあと他の子が食べているうどんを指差しながら「うっ、うっ」って言ってたんですよ!もう『うどん』が分かるんですねぇ!」
「えと、何を差しても「うっ」なんです」なんて答えて場をしらけさせるのは心が痛むので、「そうでしたか、うどん大好きなんです~うふふ」と答えた。

それはさておき、多言語国家のスイスにはバイリンガルやトリリンガルの子供たちがたくさんいるが、やはり母国語が1か国語だけの子供に比べて話し始めるのが遅いという話をよく耳にする。次男は長男と比べると格段にフランス語に触れる機会が少ないので、このままではフランス語を話すための口や耳が育たないかもしれない。まだ間に合うか。

とにかく早めに手を打たなければ。

国際郵便で書籍を送る

主人に子供たちのフランス語に関して心配していることを伝えると、彼も同じように感じていたとのことだった。語彙を増やすためには本を読むのが一番効果的だろうということで意見が合致し、早速アマゾンでフランス語の本をまとめて十数冊購入し、送付先はフランスに住む義姉の家にして、彼女から日本の我が家まで転送してもらうことにした。

ちなみに日本から海外へ印刷物のみを送る場合、通常の国際郵便よりも安く送れる便利なサービスがある。
特別郵袋印刷物 - 日本郵便

そしてフランスから海外へ送る場合はこちら。(スイスではこのサービスがなく印刷物だろうが値段は変わらなかった。)
Livres et brochures – Entreprise – La Poste


あいつが家にやってきた

フランス語の本のセレクションは主人に任せていたのだが、家に届いた荷物の封を開けると私もスイスの本屋で何度も目にしたことのある青い本が入っていた。

その名も『Caca boudin(カカ ブダン)』
「カカ」とは「うんこ」のことで、普段からよく耳にする単語である。(ちなみに「おしっこ」は「Pipi(ピピ)」)
では「ブダン」とは何のことか。食通の方なら知っているであろう、そう、豚の血でできたソーセージである。
Wikipediaではブーダンとなっている。
ブーダン (料理) - Wikipedia

レバーすらあまり好きではない私は好んで食べないが、主人は大好き。
これ、ご想像の通りただ見た目がカカっぽいということでセットになっている模様。
日本の年頃の子供たちが意味もなく「うんこー!!」と叫ぶように、フランス語圏の子供たちは「カカブダン!!」と叫ぶ。
スイスでは同義語で「カカブチ」という言葉もよく耳にした。これはスイス特有の言葉なのかフランスでも話されているのか知らないが、初めて聞いたときは日本語っぽい響きに感じた。

そして肝心の本の内容だが、ネタバレしない程度にざっくり言うと、何を言われても「カカブダン」と答える子ウサギの話である。もうこの表紙の顔からして小生意気な雰囲気なのに、この子に何言っても「うんこ!」と返事されたら非常にムカつくんじゃないかと予想されるし、そのやり取りで子供を喜ばすだけの本かと思わせときながらちゃんとストーリーもある、なかなか楽しい内容に仕上がっている。

そして、この本が何か国語にも翻訳されているのを見れはその人気っぷりは一目瞭然である。
ちなみに日本語にもしっかり翻訳されており、そのタイトルは『うんちっち』


最初はこんな本を読ませたら四六時中「カカブダン!」と言い出しすのではないかと心配していたが、長男はこの本を気に入ってはいるものの読んでいるとき以外に「カカブダン」と言ったことは今のところない。しかし新しい本のおかげでフランス語の語彙は格段に増えた。

そしてカカブダンとは言わないが、その代わりに近ごろ突然「いっせんまん‼」と言い出した。これは「一千万」、つまり「10,000,000」を意味しているのであろうが、我々はそんな数を口にしたことはここ最近ないし、もしかしたら私が寝言で「一千万円欲しい・・・」とか呟いたりしたのか。郷ひろみなら「億千万」だし、でも郷ひろみ聞いてないし、本当に謎だった。
そんなある日、長男を幼稚園に迎えに行くと、長男がまた「いっせんまん!」と叫んだ。そしてそこをたまたま通りかかった担任の先生が私に言った。
「最近しょっちゅう言ってるんですよ、一千万って。あともう一人、M君(クラスメイト)もよく言ってるんです。なんでしょうね」
これはいい情報を手に入れた。

帰ってから主人にその話をすると、「次にM君のお母さんに会ったらちょっと聞いてみてよ!」と喜んで言った。でも親しい仲でもないただのクラスメイトのお母さんに、「お宅の息子さん、よく「いっせんまん」って言うらしいですね?うちもなんですよー!なんでだかわかりますかー?」なんて言えるか!?言えないよ。
一千万って聞いたらお金のこととしか思えない私は異常なのだろうか。
だって
「今日ね、一千万匹のアリを見たよ」多すぎ。
「お母さん、人口が一千万人の都市ってどこ?」難解すぎ。
お金だとしたら大金だけど家の値段にしては安すぎるし、車かな。どんだけ高級車かよ。
もしかして、借・・・


イエナイヨ。

www.youtube.com

8年ぶりのディズニーランドで発見したミニーとスイス人の共通点

あっという間に前回の更新から1カ月が経とうとしていることに気付き、
部屋は散らかっているけどブログ更新を優先することにした。

夏休みも終わり子供たちの幼稚園と保育園も始まり、私も再就職までの短い時間を有意義に過ごそうと資格の勉強をしたり短期間のバイトをしたりしていた。
それに加えていつも家事育児を積極的にやってくれる旦那は出張続き。
ブログを書く時間が全く無かった訳ではない。しかし子供が寝静まった後あらためて散らかり放題のアパートを見渡すと、こんな状態でブログを書くわけにはいかないと気が滅入るのだった。


何度片づけても勢いよくひっくり返されるおもちゃ箱。

何度片づけてもあちこちで発見される不時着した紙飛行機。

そして雨続きだったせいでたまりにたまった洗濯物の山。
ごらん息子よ。まるでスイスのマッターホルンだよ。


立ち止まって現実を見るとあることを思い出した。
何を滅入っちゃってるんだ自分。もともとズボラでめんどくさがりで、それを誇りに35年も生きてきたじゃないか。
危うく真面目に主婦しそうになってた。旦那がいないことによりいつもは影を潜めている親としての責任感がひょっこり顔を出したのだろうか。
惑わされてはいけない。
家を片付けることよりも、忘れる前にこの夏のプレシャスな思い出をここに記すことを優先しなければ。


ディズニーランド事件簿

あまりにものどかなスイス生活によりその存在を忘れかけていた東京ディズニーランド。
なんと団体割引価格で行けるチャンスが到来した。
しかし今まで私と旦那はディズニーランドやディズニーシーに行くたびに喧嘩をしてきた。

10年前、スイス人の彼(現夫)とディズニーシーに行ったが、ディズニーリゾート初体験の彼はアトラクションのために長時間並ぶことが理解できなかったようで、こんなんにそんなに並ぶ意味が分からないと言われた私が文化の違いに泣いた。そして軽くキレた。(これだから田舎者は。ってスイス人のことバガにしったあだすもトーホグ人だっぺ。)

その後行ったパリのディズニーランドでは、電車で向かった際に降りる駅がわからず適当に切符を買ったら見事に間違えていて、結果、無銭乗車とみなされ罰金を払わされた。(このとき初めてフランスやスイスでは乗り越し精算システムがないことを知る。)
乗り越し精算すらさせてくれないフランスのシステムのイケてなさに立腹した私はディズニー入場前からプンプンしていた。(今となっては自業自得の極みだと過去の自分を恥じるが、当時フランス人に影響されていた私は怒れるチャンスを探してはプンプンしていた。)

こんな痛い思い出しかない私たちのディズニーランド。
旦那はもともとディズニーランドが好きなタイプでもないし、きっと行きたがらないんだろうなと聞いてみたところ、返事は意外にも
「行こうよ」
私が反対する理由はない。


雨のディズニーランド

団体割引料金で入場できる日程はあらかじめ決まっていた。
猛暑続きの8月。子連れということもあり、暑さや熱中症対策の心配ばかりして、現地で飲み物に散財してたまるものかとペットボトルに入れた麦茶を冷凍庫にこれでもかと放り込んでいたのに、当日は雨。気温も低めだった。
涼しかったけど、この日のために用意した麦茶だから意地でも持って行った。

ディズニー大好きな友人と現地で待ち合わせし、もう我々のプランは彼女についていくのみ。

彼女はネットでショーの抽選に応募してくれたりピザ食べたいといえばピザ屋に連れて行ってくれた。
ピザと一緒に家から持ってきた麦茶を飲もうかとバッグから取り出したがまだ半分以上凍ったままだった。
子供には足りるけど私の分は無いなと思ったので、ピザと一緒に私の分のスプライトだけ抜け駆けして買ったら、席に着いた瞬間にテンション上がってはしゃぐ長男がスプライトをぶちまけた。

ディズニーランドでは子供をないがしろにすると罰が当たるようだ。


雨のパレード

ディズニーランドでは、一日に何度かパレードが開催されているが、雨の日は雨の日用のパレードに変更になるようだった。
巨大な山車に乗ったミッキーその他のキャラクターたちがものすごいテンションで踊ったり手を振ってくれるのだ。
これには子供も大喜び。
キャラクターの周りでは、人間様のダンサーたちもパレードを盛り上げる。
しかしちょっと気になったのが、キャラクターもダンサーも手にホースのようなものを持っており、そこからすごい勢いで放水されていることだった。
確かに雨は降っている。私たちもレインコートやポンチョなどを着て濡れないようにはしているのだ。
でも、こちらに向かって容赦なく放水してくるニコニコのお姉さんダンサーズに手放しで喜べない自分がいた。
ちょっと目を背けて【こっちは間に合ってますオーラ】を出そうとしている自分に気づいた。これはマズかったと反省した。
相手は演者、私は観客。
観客が演者に忖度を求めてはいけないんだ。


ミニーの家

トゥーンタウンに行ってみた。ここは小さな子供向けのアトラクションが多め。
旦那と長男が車系アトラクションに行き、私は友人と次男とミニーマウスの家に行った。
ミニーマウスといえば、ミッキーマウスの恋人である。
家に入ると、目に入ってくるのは可愛らしい家具、そしてなんとミニーのTO DOリストまである。
気になったのは、『ミッキーのおべんとうをつくる』という項目。
ふむふむ。ミニーも男に尽くす系の女なのか。私とはタイプ違うな。
いや、リストには書くけどやらない人パターンもあるか。でもネズミってマメそうだよな。

そんなことを考えながら奥の部屋に進むと可愛らしいドレッサー。
そしてそこで写真を撮ろうと列を成す女子たち。待ってる人たちに遠慮なしに、口を尖がらせて結構な枚数を取り直してるお一人様もいる。彼女のハートの強さ分けてほしい。

さらに奥へ行くとそこはキッチン。
大きな冷蔵庫があったので無造作に開けてみると、そこにはアレが。



ご覧あれ、このスイス人やフランス人もびっくりのチーズのセレクション
旦那がもしここに居合わせたら目がくらんで倒れてしまったかもしれない。
よく見るとアイスクリームまでチョコチップならぬ"チーズチップ"入りではないか。

ミニーマウスはやっぱりネズミなんだ。マウスって言ってるし。
ムーミンはカバじゃないけど、ミッキーもミニーもネズミだ。
ちょっと気になってWikipediaを見てみたら、ミッキーマウスの愛読書に『チーズと平和』とあった。
ミッキーマウス - Wikipedia

もしこの本が実在するなら著者はおそらくスイス人だろう。
そしてミニーがミッキーに作るお弁当の想像がついた。それはかわいい顔のついたキャラ弁などではなく、パンとチーズ。これに違いない。
それなら毎日でも気軽に弁当作りを続けられる。
ミニーのアイディアを頂戴したいところだが、日本の現実世界で毎日これをやってしまうと破産する。
ヨーロッパのチーズが安く買える社会が訪れる日は来るのだろうか。

初めての子連れディズニーを振り返る

行く前は、次男が小さい(1歳3か月)ので乗れるアトラクションもだいぶ限られるだろうし、汽車と船くらいなら乗れるかと予想していたが、思いのほかたくさん乗れた。
リニューアルされたというイッツアスモールワールドを皮切りに、ジャングルクルーズ、カリブの海賊、ホーンテッドマンション、プーさんのハニーハントまで乗れた。もちろん汽車と船も乗った。結局朝の開園から閉園近くまでどっぷり楽しんだ。


最後に、今回のディズニーランドで個人的に印象に残ったことは、ディズニーランドにいるとやたらお腹が空くということだった。
レストランは高めだし混んでいそうだったので、ピザやラップサンドのような軽食を食いつないでいたが、食べても食べてもすぐにお腹が空いた。「あれ、本当に私たちさっき食べたよね?」ていうくらいすぐに減る。コンセプトが『夢と魔法の王国』らしいから、食べ物にも何かしらの魔法がかけられてるのかもしれない。
最終的にトゥーンタウンでフライドポテトをお代わりして食べたらちょっと落ち着いた。ポテトは普通のポテトらしかった。
夜もレストランでしっかり食べたが物足りなかった。

ミッキーの好物である乳脂肪分の多いチーズでも売ってくれたら腹にたまりそうなのにと不満を漏らさずにはいられなかった。

全体的な感想を言えば、ここでは普段の生活ではできない体験ができるので、たまに行くと脳への刺激になっていいと感じた。

来年も団体割引で行けるなら、凍った麦茶がほどよく溶けるくらい暑くて、ダンサーのお姉さんたちが放水ホースを持っていない日になるといいな。

もしまた雨ならゴーグルを持っていって顔いっぱいパレードの水を浴びてやろうじゃないか。

欲求不満か愛情不足?爪を噛み始めた我が子に焦る

久々になってしまったブログの更新。
その理由はいろいろある。

当たり前のことかもしれないが、長男が夏休みでずっと家にいるようになってから自分の時間を持つのが難しくなった。その後バタバタしながら実家に帰省。

そして更新が滞った最大の理由。それは息子が爪を噛み始めたこと。

爪を噛む子の心理

何を隠そう、この私も小さいころに爪を噛む癖があった。
そして私がハイティーンになったころ、私の母が急に私に打ち明けた。

「あなたが小さかったとき爪を噛み始めたから小児科で相談したら、娘さんは欲求不満ですからもっと遊んであげてくださいって先生に言われちゃったわよ」と。

長男が爪を噛んでいることに気が付いたのは夏休みに入る前だった。
気付くたびに手を口に入れないように軽く注意していた。
しかし夏休み入り、幼稚園では暇を持て余す間もなく園庭で友達と遊んだり工作したりしていたのが無くなり、爪を噛める時間も増え、母親は家事を終えると公園に連れて行ってはくれるもののすぐに「そろそろ帰ろう。(この暑さからあなたを守るために)」と言い出すし、寂しくて満たされなくてやっぱり時間もあるし手がお口に吸いこまれた。

その結果、気付いたときには全指が目を覆いたくなるような深爪になっていた。

やっぱりアレか、アレなのか

そこで我が母親からの呪いの言葉が脳内にこだました。


『欲求不満・・・』


もう30年も前の話だし、医学も日々進歩してるしきっと今は違う原因が解明されているはず。

でももし本当に爪を噛む原因が欲求不満だったとしたら、我が子が欲求不満な原因は明らかに私にあるのだ。
それを認めたくない自分がいた。めちゃくちゃ適当に育児してるくせに。

なぜなら私はこんな奴。

白米をお茶碗半分しか食べない私。
「そんなに食べてないのに産後の体重が戻らない」と言っている私。
おかずをその10倍くらい食べていることは普段は気に留めていない。

子供を毎日のように公園に連れていく私。
そのあと家に帰ってきてボケーっと携帯でニュースを眺めているうちに
子供そっちのけでニュースのリンクをハシゴしちゃってることもやっぱり普段は気に留めていない。
遠くから「ママ、ママー‼」と呼ばれて意味不明に真剣な顔で「ちょっと待って」とか言ってしまう私。
見てるニュースは存在すら知らなかった若い女優のスキャンダルとか。
もう何だってよくなっているーーー

これはまずいぞ。


ネットで恐る恐る調べる。
「子供 爪を噛む原因」

すると出てくるのは案の定『欲求不満』そして『愛情不足』。
自分の非を認めざるを得ない。だって思い当たる節だらけ。
ブログ書いてる場合じゃなーいw
という訳ではないんだが、焦って余裕無くなった器がおちょこ大な私。


今のうちにやれる欲求不満対策

こんな私もついにパートタイムで仕事を始めることが決まり、息子の夏休み明けには一緒に過ごせる時間が少なくなることに。
再び働くことは望んでいたことなので嬉しいが、こんな状態のままでは息子の爪を気にして仕事が手につかないなんて状況にもなりかねない。
時間のある今のうちに何とかしなければ。


そう思ってこの3週間は息子とたくさん出かけた。
欲求を出来るだけ満たしてあげられるように楽しいことをたくさんしよう。
公園は私が飽きるので、もっと大げさにアクティビティーをした。

めちゃくちゃ久しぶりに東京ディズニーランドにも行った。

暑くてしんどいときは室内で楽しめることをしようと水族館へ行った。
結果、この夏は3か所の水族館に行って息子がアジとサバ以外の魚の名前を覚えた(マグロ)。

一度は天気予報を確認せずに猛暑日の中うっかり動物園に行ってしまった。
ぐったりと横たわる動物たちを堪能し、最後に訪れた小動物コーナーにいたウサギのうちの1羽が姿勢よく座って前を向いたまま尋常じゃなく痙攣していたので、
これはただ事ではないと思い飼育員の方を呼んだら、
「これだけでは暑さなのかただ緊張しているだけなのか判断できかねますが、ご報告ありがとうございます」と言われた。
私たちのせいで震えていた可能性を突き付けられて狼狽した。
気になって1時間後くらいに見に行くと、もう震えていなかった。
(ウサギ、なんか、ごめん。)


そして実家に帰ってたくさん遊んだ。
海にも繰り出して、釣りもした。
私がウハウハ言いながらサビキで小アジを釣っていると、隣で息子が
「今日も一日がんばったから」
とバケツを泳ぐアジ1匹ずつに労いの声をかけつつ海に還しているのに途中で気づいた。
釣っても増えないアジ釣りに夢中になりすぎて気付けば私はこんがり焼けていた。
隣の白人旦那は露出したとこだけ真っ赤になって、紅白幕みたいになっていた。

東京へ帰り、私はママ友の1人と偶然会った。
「実は家族でグアムに行ってきて」
そういう彼女の肌は真っ白だった。
はたから見たらグアムに行ったのは間違いなく私のほうだよな、と自分の真っ黒に焼けた腕を撫でた。


こまめに更新しないと書きたいことがたまっていつも以上に支離滅裂なブログになることがわかってきたところで話を戻すと、
結局長男の爪には苦いマニキュアを塗ることにした。

どてっ。


これ、偶然ながらスイス製。このマニキュアのメーカー自体はスイスやフランスではよく見かけていて私もスイスにいたころから使っていた。
この爪噛み防止マニキュア。苦いといってもどの程度か興味をそそられて自分でペロっと試してみた。

うん、すぐに浮かんだ似た味のものは『生のゴーヤ』。
ゴーヤサラダが好きな方にはきっと逆効果なのでご注意を!
ちなみに息子はたまに癖で口に手を運ぶが苦いのですぐに出すようになった。
そして爪がキラキラ輝いているのにご満悦でめでたしめでたし。


さてと。明日は何して遊ぼうかな。
震えてたウサギのお見舞いにでも行こうかな(←ネタ切れ)。

在日スイス人は何をする? スイス建国記念日 IN ジャポン

8月1日はスイスの建国記念日である。

本国スイスでは全国各地で花火が打ち上げられ、持っている人はタンスに眠るエーデルワイス柄のシャツやサスペンダーを引っ張り出して身にまとい、老若男女皆どんちゃん騒ぎ、したりする人もいる。


そんな自国の一大イベントの日に遠いアジアの国ジャポンに住むスイス人たちが数人集まった。彼らが建国記念日に開催したスイス風ホームパーティーをレポート。

まずはスイス名産の白ワインで乾杯

スイスではワインの生産が盛んである。ラヴォー(Lavaux)という地区のブドウ畑は世界遺産にもなっているワイン産地だが、スイスの物価が高いためか日本ではそんなにスイスワインを見かけない。

それでもこの特別な日に自国のワインで乾杯すべく、もちろんスイス産の白ワインがこの日のためにストックされていた。


グラスにワインを注ぐスイス人。

そのグラスを手にするスイス人たち。

「サンテ!(乾杯!)」

「ヴィヴ ラ スイス!
(スイス万歳!)」


ワインを味わうスイス人たち。

「セ ボン(美味しい)」

「セ ボン!(ウマい!)」

「セ トレ ボーン!
(チョーうめぇ!)」

「セ トロ ボーーン!!
(うまい、うますぎる!!)」


褒めちぎるスイス人たち。
いつもはフランスやイタリアのワインで妥協しているが、今日は我らが誇るスイスのワインを味わえる。

盛り上がってスイスの国歌を思わず口ずさむが、実は国歌を知っているスイス人は多くない。出だしの歌詞しか知らないので途中からハミングになるがメロディーさえも怪しく、結局カラオケの曲を入れ間違えた人みたいにあやふやになりフェードアウト。
これお決まりのパターン。

猛暑日だろうがチーズフォンデュ

昨日の東京の最高気温は35度。立派な猛暑日だったが出てきたのはチーズフォンデュ。

チーズフォンデュは日本で言うところの『鍋物』のように、一般的には冬や寒い時期によく食べられるスイスが誇る伝統料理。
8月1日はスイス人にとって特別な日なので何としてでもチーズフォンデュを食べなければ。

エアコンの設定温度は17度。
完璧だ。


会場に着いたばかりの人たちは食べる前から汗だくだが、熱々でブクブクのフォンデュをつつく。(いろんな意味で地獄。)

でもスイス人たちはまた「セ ボン」の大合唱。暑かろうが汗だくだろうが久々に食べるフォンデュの味は格別なのである。

そんな彼らを前にすると、私なんかがチーズフォンデュを食べてはいけないと思えてくる。
わざわざ海を越えてやってきたスイスのフォンデュ用チーズ。こんな暑い日にフォンデュかよなんて思ってしまう外国人の私にフォンデュを食べる資格は無い。
この目の前に広がるチーズの海は聖域だ。

邪悪な心を持った人間はこの聖域に近づいてはならない。


そんなことを思いながらスイス人たちがチーズをぐるぐるとフォークでかき混ぜているのを見ていると、肩の辺りが冷えてきた。設定温度は17度だからだ。

もう鳥肌立つまであと一歩。ついさっき「フォンデュかよ」と思ったのは誰だったのだろう。いま、私はフォンデュを欲している。

“チーズのぐるぐる”を見つめていたことによる催眠か。私は今「死ぬ前に食べたいものは?」と聞かれたら迷わず「チーズフォンデュ」と答えるだろう。


そして天の声に促されるまま溶けたチーズの海にフォークに刺したパンを投入。


ぐるぐるぐる。 

ぐるぐるぐる。


こうやってつけて、

うまい!!


この後もうひとつのスイス伝統料理であるラクレット(これも溶けたチーズっす)も始まったが、フォンデュですっかり目が回ってしまった私は旦那と子供を家まで連れて帰る責任感に苛まれやむなく家路についた。


ということで日本にいるスイス人が建国記念日にすることは以下の通りだった。

  • スイス産白ワインで乾杯 
  • 国歌斉唱(Aメロのみ)
  • エアコンを17度に設定してチーズフォンデュ
  • エアコンを17度に設定してラクレット


オーストラリアなど南半球に住んでいるスイス人のほうが、季節が冬であるおかげで建国記念日のチーズフォンデュがより美味しそうで羨ましいと思った夜だった。

記憶力との戦いと、マシューとの戦い

そろそろ再就職したいと目論み、コソコソと応募書類を作成してたり送付したりしている私には心配事がある。

それは30代の女性が白髪の増加と共に直面する恐怖。


MO・NO・WA・SU・RE =

物忘れ


30代も半ばになると記憶力低下の言い訳がありすぎる。
妊娠 出産 加齢 育児ストレス

もう妊娠中から「自分はこの先の人生やっていけるのか」と不安に感じた。日本人女性の平均寿命を考えると、この先約50年ある。30代の今の時点でこの調子じゃ60歳になるころには

「日本人の主食って何だっけ?今朝食べた気がするんだけど……」

みたいなことになるに違いない。末恐ろしい老後の生活。


ちょっと緊張していたりパニくったシチュエーションだと自分の電話番号さえ忘れる。これはもうそろそろ医療機関で検査をしたほうがいいレベルに近づいているのではないだろうか。


しつこく居座る昔の記憶

こんなにハイレベルな物忘れをしている私だが、以前は決して記憶力が劣った人間ではなかったはず。


私は中学生のときに映画と音楽にはまった。
雑誌を買い漁っては好きな俳優やバンドの名前を記憶していった。その熱は20代半ばくらいまで続いただろうか。

映画

洋画の2大雑誌といえば『ロードショー』と『スクリーン』。海外の俳優の名前表記が違ったりしたが、そのどちらも覚えていた。スクリーンの名前表記はネイティブの発音に似せた表記のようで、ちょっと特殊なものもあった。

レオナルド・ディカプリオはレナード・ディカプリオ

ユマ・サーマンはウーマ・サーマン

え、本場ではウーマなの??   
うま?   ・・・馬?  このあたりから様子がおかしくなってきた。
(ちなみにフランス語では「ウマ・トゥーマン」みたいに聞こえる。
トゥーマン!!)

そしてなんと言ってもこれ。
マシュー・マコノヒーは
マシュー・マコナヘー 



マコナヘー!??



マコナヘーに関しては響きが印象的過ぎるおかげかもしれないが、これらのことは20年近く経った今でも覚えている。マコナヘーの知識は残念ながらこの数年間で披露する機会はなかったし、この先も無いだろうから今日を最後に忘れ去ってしまってその代わりに新しい有益なことを記憶したいくらいだが、マコナヘーは私の脳にこびりついて離れない。きっと死ぬまでマコナヘーは忘れないんだ。そしてこの先「マチュー・マコノヒー」という名前を耳にするたび私は心の中でつぶやくだろう。

(マチュー・マコナヘーとも言うけどね)、と。


音楽

音楽も大好きで、邦楽洋楽問わず歌の歌詞も覚えていた。
テレビの音楽番組の中で好きな歌手やバンドが演奏しているところだけを録画したVHSをたくさん持っていた。まだYOUTUBEなんて無かったので、テレビの前に張り付いて一生懸命にこの“つぎはぎ”ビデオを作って何度も何度も見た。

これは今から20年も前の話なのに、未だにその当時に聞いていた歌の歌詞は自分でも驚くぐらい覚えている。自転車に乗りながら口ずさむのは90年代のヒット曲ばかり。引退した小室哲哉の作った歌も小林武史の作った歌も私は歌い続ける。
90年代の音楽はサイコーなんだぜぇ。

ロッケンロー。


幼稚園で必要になる記憶

ハーフの子を持つ親である私は、どうやら幼稚園のクラスメイトの親たちに覚えられやすいらしいことに最近気付き、焦っている。

私は決して目立つタイプの人間ではない。どちらかというと黙っていると影が薄いタイプだ。(しゃべり出すと失言したりするので誰かの印象に残る可能性は高くなる。)
顔だってサッパリ弥生人顔だ。先日、上野の国立科学博物館に行き、弥生時代の人の蝋人形を見た。私が彼らの代わりにガラスケースの中に入っても生身の現代人が入っていると誰も気づくまい。私の顔はシンプルな日本人顔で、スルーされやすいはず。

それなのに。
幼稚園や近所でよく挨拶される。みんな私の息子の名前を覚えてくれている。私も何度も話したことのあるお母さんや、ファッションや顔に特徴があったり誰かに似ている人は結構すぐに覚えられる。

でも子供の名前まで覚えるのはなかなか難しい。名簿はあるが、お迎えやイベントのときにたまに見かけるだけの子供たちの顔と名前がどうも一致しない。
向こうが私の息子の名前を呼んでくれているのに、私が相手の子供の名前を言えないのが不自然だし、覚えてないことがバレていそうでばつが悪い。


先日、ある親子の集まりに参加したとき、一人のお母さんに挨拶をした。私は初対面だと思い、「はじめまして。ですよね?」と保険で(ですよね?)を付けて言ってみたところ、案の定「あ、もうお会いしてます」という返事がきた。私の頭上だけスコールが降っているんじゃないかってくらい汗をかいた。

「あ、そうでしたっけ!?失礼しました!!」

その場にいた私の知り合いのママ友が、前回ショッピングモールでばったり会ったときに一緒にいたのが彼女だよと説明してくれた。しかも彼女の子供の名前が私の子供の名前と同じだと紹介されたのだった。これでやっと思い出した。

「あああ!そうでしたね!すいませーん!」

もう笑うしかない。すると彼女は付け加えた。

「そのあともう一度お会いしています。幼稚園のイベントの日に帽子を落としたのを拾っていただきました。」


はいはいはいはい。
確かに幼稚園のイベントで帽子を拾いましたわ。そしてそれを探していたお母さんに渡したんですわ。

2度も会って、しかも話までして子供が同名という共通点まである人のことを覚えていないって。これは認知症と名のつくものなんじゃないだろうか。

いやきっと違う。私は気がついた。
私は人の顔をちゃんと見ていないのだ。いつもチョロマカ動く息子に気をとられ、人と話していても心ここにあらずなのだ。
本当に申し訳ない。もうちゃんと顔を覚えた。こんな失礼な女に笑顔でたくさん話をしてくれた優しい女性だった。


問題なのは『物忘れ』よりも、『覚えられない』ことなんだ。


もう私はみんなに顔を覚えられないようにサングラス常用するか。そしてカゲでみんなに「タモリ」っていうコードネームで呼ばれるのも悪くない。


んもう!こんなこと言ってる場合じゃないわ。このままじゃ『感じ悪いヤツ』というレッテルを貼られてしまう。


その前にこんなに記憶力ヤバい30代を雇ってくれる人がいるのだろうか。
カモフラージュするために、私のこれまでの人生の賜物である長期記憶を武器にしよう。
90年代ヒットソングメドレーがソラで歌える人材をお探しの会社をご存知の方、
ぜひご一報を。



なんとかしてよマコナヘー!!